研究会情報

首都圏形成史研究会の趣旨と目的

1960年代以降、日本近代史研究は限定的な視点からのみでなく、研究者の層の厚さが加わったこともあって、視点・対象が多様となり、顕著な発展を示してきた。さらに、自治体史編纂事業の盛況は近代史の分野においても地方史研究を盛んにした。 私たちは関東地方で、委託を受けた執筆者、あるいは編纂の事務局担当ないしは資料館員として、手探りの状況でそれぞれの自治体史研究に携わってきた。その過程で、常に問題となるのは、政治的経済的に地方の独自性が強い前近代と異なり、地方史研究は近代においてもなりたつのかという疑問であった。 近代社会の主要な側面が、圧倒的な中央政治権力、岩をも貫く資本主義諸力、個人の内面までも規制するマスコミの威力などによって代表されるならば、独自の近代地方史研究などは存在する余地がなくなるであろう。私たちのまわりにある近代地方史はこうしたものが多い。しかし中央・地方とは相対的に独立した地域の歴史、人々の独自の生活はあったはずである。種々のレベルの自治体のなかで生じた事件あるいは人々の生活を、安易に中央史と短絡することなく、独自の地域像をもとめる努力を怠ってはいけないであろう。 中央の規定性が強い近代においては、前近代以上に意識的に、中央と地方との間に二重、三重の介在物を挿入して地方史を検討していかなければならない。幸いなことに、こうした努力が部分的にではあるが行なわれはじめた。注目されるのは、多摩百年史、中川・荒川流域の総合研究などである。また、個人では個別的テーマに即して行政区画にとらわれない研究も行なわれてきた。 関東地方で近代史を考える場合、政治の中心であり、経済活動の核であり、情報の発信地であるメガロポリス東京の巨大さは決定的である。もちろん江戸時代にも江戸とその後背地関東農村との関係には、人口の流出や地廻り経済圏の形成など、近代にみられるのと同様な諸問題が生じていた。しかし明治以降の過程は、より急速にかつ大なる規模をもって首都東京が吸引力を発揮し、「首都圏」なる地域性を 関東地方に付与していった。 このように関東地方は、「首都圏」としての同質性を持つ一方、当然のことながら、各々には異質性も備えていた。各地方の東京への結合のあり方、「首都圏」における位置は各地方が持つ歴史的・人口的・自然的条件によって異なっていたのである。さらにまた、横浜・浦和・千葉などの新たな国家的・地方的必要によって出現した都市の存在が複雑な地域的結合を生み出していった。 「首都圏形成史研究会」は、第一に関東地方が「首都圏」として編成替えされてゆく過程を、個別自治体の枠を超えて研究すること、第二に関東地方の近代史に興味を持つ者、あるいは自治体史の編纂に従事している個人・機関の情報交換・交流をはかることを目的にする。 (1994年4月2日制定、『首都圏形成史研究会会報』第1号〈1995年〉掲載)

会則

第1条 本会は首都圏形成史研究会と称し、事務局を横浜開港資料館(横浜市中区日本大通3)内におく。 第2条 本会は首都圏の形成過程を歴史的に検証するため、関東地方を中心とする近代史研究を推進し、各研究者・団体・自治体史編纂担当者との相互交流をはかり、資料の情報交換等をはかることを目的とする。 第3条 前条の目的に従い、本会は次の事業をおこなう。 1、研究会の開催 2、会報および研究報告書の発行 3、共同調査および資料調査報告会 4、その他会の目的の達成に必要な事業 第4条 本会の目的に賛同し、入会の申し込み手続きをおこない、所定の会費をおさめる者をもって会員とする。会員は本会の諸事業に自由に参加できる。 第5条 本会の最高議決機関を総会とする。総会は年1回これを召集するほか、常任委員会の決定により、臨時に開催することもありうる。 第6条 本会に次の役員をおき、任期を2年とする。なお再任をさまたげない。 1、顧 問  若干名 2、会 長  1 名 本会を代表し会務を総括する。 3、副会長  1 名 会長を補佐し、会長不在の場合は会務を統括する。 4、常任委員 若干名 常任委員会を構成し、会務を執行する。 また必要に応じて内規を定める。 5、会計監査 2 名 会計の監査にあたる。 第7条 本会の経費は、会費・事業収入・寄付金をもって支弁する。 第8条 本会則の変更は、総会出席者の三分の二以上の賛成を必要とする。 第9条 会費は年額3,000円とする。但し、学生・大学院生は2,000円とする。 第10条 本会の会計年度は毎年6月1日に始まり、翌年の5月31日に終わる。 (最終改正:2016年7月16日総会承認)

役員

  • 顧問   高村 直助
  • 会長   上山 和雄
  • 副会長  老川 慶喜
  • 常任委員 26名
  • 会計監査 2名
  • 事務局  西村 健(事務局長) 神谷大介 松本和樹 出口颯涼
(2024年7月16日現在)