「千葉県文書館収蔵公文書の不適切な大量廃棄・移動の停止を求める要望書」について

首都圏形成史研究会では、2017年1月20日の常任委員会の議決に基づいて、
2017年2月21日付で千葉県知事に対して「千葉県文書館収蔵公文書の不適切な大量廃棄・移動の停止を求める要望書」を、アーカイブズ学・考古学・歴史学関係の諸団体とともに提出しました。

以下、その要望書を掲載するとともに、
提出した要望書に対する2017年3月27日付の千葉県文書館長回答を掲載(PDFのみ)いたします。

2017年2月21日付要望書(PDFへのリンク)

2017年3月27日付回答書(PDFへのリンク

 


千葉県知事
鈴木 栄治 様

千葉県文書館収蔵公文書の不適切な大量廃棄・移動の停止を求める要望書

  千葉県文書館(以下「文書館」といいます)では、2015年度中に収蔵公文書13,039冊が減少しました。このうち、10,177冊が廃棄され、2,862冊が貴県政策法務課の書庫に移されています。貴県の公文書の廃棄は、県の歴史・文化を探求しようとする県民や歴史研究者の活動を著しく阻害する行為であることはもちろん、県政を検証するための重要な手がかりである公文書を県民から奪ったことにもなります。移動された公文書についても、簡便な手続きで文書館にて閲覧可能であったものが、情報開示請求の対象となり、利用の壁が従来と比較して大幅に高くなりました。
 この件について、日本アーカイブズ学会から貴県への質問に対する回答、情報開示請求によって交付された廃棄・移動公文書リスト及び文書館が毎年作成している『事業概要』等から以下の経緯が判明しました。
 貴県では、2011年4月の「公文書等の管理に関する法律」(以下「公文書管理法」といいます)の施行を受けて、「千葉県行政文書管理規則」及び「千葉県行政文書管理規則の運用について」が改正され、2015年度から運用が始まりました。この規則改正で、「長期」(実質、永年保存)とされていた公文書の保存期限の区分が廃止され、上限が30年保存とされました。これにより、従来文書館で一括して保存されてきた「長期」保存文書のうち完結後30年を経過しているものは、すべて上記の規則改正と併せて制定された「歴史公文書の判断に関する要綱」に基づき遡及して評価・選別の対象とされました。また、有期限保存文書であっても歴史的に重要と判断され、文書館に移管されてきたものも同様に対象とされています。その結果、1万点以上にものぼる文書館収蔵公文書が廃棄と判定され、現在の職務遂行に必要だとの判断から2,862冊が政策法務課の書庫に移動されました。この間、規則改正にともなう形式的なパブリック・コメントが行われたのみで県民・利用者に対する説明は十分に行われませんでした。『事業概要』で数値の推移のみ開示されているものの、県民・利用者へは廃棄・移動された公文書の内容に関する情報さえ提供されていません。
以上のように大量の公文書が廃棄・移動され、2015年3月までは文書館でだれでも閲覧請求することが可能であったものが、現在はできなくなりました。何らかの理由で収蔵公文書を再び評価・選別する場合であっても、実施に当たっては慎重な議論・手続や県民への丁寧な説明が必須です。それが行われなかったばかりか、恩給裁定原義や遺族台帳等の第二次世界大戦に関連する公文書や県にとって一大行事であった1973年の国民体育大会に関する簿冊等の明らかに歴史的に重要な公文書がすでに廃棄されています。また、政策法務課の書庫に移動された明治期の人事記録等が、現在の業務において日常的に必要なものなのか、はなはだ疑問です。
 前掲『事業概要』によれば、2015年度までに再評価・選別された文書館収蔵公文書は約25パーセントであり、残りの約75パーセントは現在も判定作業が進められています。さらなる公文書の不適切な廃棄・移動が行われる可能性が、極めて高いのが現状です。わたしたちアーカイブズ学、考古学、歴史学並びに千葉県の歴史研究に携わる者は、文書館や関係当局が、公文書の管理・利用に対する認識を大きく改め、現在進めている不適切な評価・選別による廃棄・移動を停止し、県の公文書管理のあり方を見直すことを強く要望します。

2017年2月21日

アーカイブズ学・考古学・歴史学関係14団体
日本歴史学協会 関東近世史研究会 首都圏形成史研究会 千葉歴史学会 千葉歴史・自然資料救済ネットワーク 地方史研究協議会 日本アーカイブズ学会 日本史研究会 日本考古学協会 東アジア近代史学会 明治維新史学会 歴史科学協議会 歴史学研究会 歴史教育者協議会